nanowell Journal

まなべる ナノウエル

2022.07.22 まなべる ナノウエル #01

【松浦 結さん】毎日のケアからシニア介護まで、多くの犬たちの人生に寄り添う生きかた

1回目は、兵庫県芦屋市の「トータルペットケア kabs」代表・松浦結(まつうら ゆい)さん。愛犬と暮らしながら、毎日のケアからシニア介護まで、多くの犬たちの人生に寄り添う生きかたを選んだ彼女の目には、どんな未来が見えているのでしょう。

愛犬のすみれちゃんと雨ちゃんの出会いは?

雨との出会いからお話ししますね。もともとコッカー・スパニエルがすごく好きなんです、性格も容姿も愛らしくて。でもトレーニングが難しい子やトリミングのお手入れが大変だったり、犬種特有の病気が多かったりすることもあって、ただかわいいだけじゃお迎えできないなと二の足を踏んでいました。そんななか、インスタグラムを通じて、興味を持ったコッカ―・スパニエルのブリーダーさんを見つけました。たまたま夫の実家の近くだったので、帰省のときにブリーダーさんに会いに行ったんです。すごく驚きました、チャイムを押してもだれも吠えなかったんです。おとなのわんちゃんが40頭以上いるのに、臭いもまったくしなくて衝撃を受けました。普通の住宅街のなかで、天然芝の広いお庭をつくって、運動の場所を確保していて、とても真剣なブリーダーさんだと感じました。自分のキャリアやライフステージを考えても、100パーセントで犬と向き合えるのは今しかないと思い、そのブリーダーさんからお迎えを決意しました。

雨ちゃんの名前の由来はなんですか?

この子は、ブリーダーさんのもとでは、「しずく」ちゃんという名前で、6月生まれに関係する言葉だったんですよ。当社の名前「kabs」は、歴代の子たちの名前の頭文字から取っていて、このアルファベットからまた名前をつけたかったんです。前の子が亡くなりAが空いていたので、6月由来で雨(あめ)になりました。

すみれちゃんについて教えてください

雨をお迎えするまでは保護犬ばかりでした。一般家庭で飼えなくなったゴールデンとか。

すみれは母が見つけました。私の実家では、ずっとビーグルを飼っていたんです。いつも見ていたビーグルグッズ専門店のWEBサイトの里親募集で目にとまり、思い立ったら即行動ということで、正月早々、会いに行きました(笑)。会いに行くと、なぜかずっと私から目を離さなくて。お迎えしたあともそうで、なにより先住犬にとてもなついていたんです。それで結婚して実家を出るときに、一緒に引っ越ししました。

ふたりはどんな存在ですか?

この子たちがいるおかげで、働く原動力になっているし、人生を豊かにしてくれている存在だと思っています。

仕事場にはいつも雨ちゃんと一緒に来られるんですか?

今日はちょっと朝のお散歩で失敗しちゃったので、トレーニングのために連れてきました(笑)。

この仕事をはじめたきっかけはなんですか?

仕事のきっかけというと難しいんですけど、小学校のとき、商店街に住んでいたんです。その商店街のなかにペットショップがあって。実家もお店をやっていたので、ペットショップのオーナーさんも知り合いのおじさんだったんですけど、毎日そのペットショップに通ってたんです。今思うとすごく迷惑だったと思うんですが、私、小学校からの帰りに2、3時間はいたんじゃないですかね。ずっと動物図鑑を抱えていて(笑)。当時は、動物に関わる仕事ができるとは思っていなかったんですけどね。

あるとき、母が突然ペット保険のサービスを立ち上げ、それを知ってもらうためにペットシッター事業を同時にはじめたんです。20歳のときに転職して、母のペットシッター事業に合流しました。そこにトレーニングの要素も加えられたらと、トレーナーの専門学校に通うことにしました。でも専門学校は1年で辞めて、警察犬の訓練士になるために、訓練所に1年くらい住み込みで働きはじめました。とても大変な仕事でした。当時、訓練した子たちって、作業犬なので、厳しい訓練を受けていたんですけど、自分には合わない気がしたので、一般職に戻りました。その後、あらためて転職を考えはじめた時に、母の事業に合流しました。

警察犬の訓練って、過酷ですよね

犬にとってはそうかもしれませんね。もちろんトレーナーとして、厳しく、高度でむずかしいことをさせることはできます。でも家庭犬にそこまでする必要ってないかなあと。ただ、他人に迷惑をかけないようにするのは大切です。私たちが目指したいのは、ヨーロッパのように、人と一緒に電車に乗れるような社会です。公共の場所で吠えてしまったり、粗相してしまったりすると嫌な気分になる人もいらっしゃるので、一緒に暮らす上で最低限のマナーは必要だと思います。そんな想いを飼い主さんにもわんちゃんたちにも伝えていければと思い、ここをはじめました。

シニア犬向けの介護サービスのきっかけは?

介護士だった姉が、母が運営しているペット事業「芦屋バティーズ」に合流したときに、わんちゃん向けの介護サービスを本格的に開始しました。ペットシッターって実はとてもむずかしいお仕事です。私たちも日々ペットシッターや散歩代行のお仕事をしていますが、散歩一つとっても、さまざまなリスクがありますし、はじめましてのわんちゃんをしっかりコントロールするのは、結構むずかしいことです。そんなペットシッターの仕事も、今では目指す人が増えました。そこで、まだまだ発展途上のシニアケアに着目しました。

実際、お客様のわんちゃんたちがどんどんシニアになっていって、おうちのなかでお世話が大変になってきたこともあります。最初、バティーズではお客様のわんちゃんの体調や状況にあわせて、介護用品を輸入していました。当時は国産品が少なく、わんちゃん用の車椅子などもアメリカから輸入していましたね。

自分の愛犬のシニア期に対して、心構えや準備しておくことなどはありますか?

シニアになったときの想像をしておくこと、そして、相談をできる場所をつくっておくことが大切です。シニアケアに寄り添ってくれる獣医さんやショップとつながっておくことで、将来のことを考え、サポート体制を確保しておくことがいいんじゃないでしょうか。

20年前、介護サービスを始めたときは、展示会でお客様に介護用品などの案内をすると「縁起が悪いからやめて」と言われる時代でした。10年くらい経って、「今は元気だけど、いずれシニアになるから、パンフレットください」とお客様のほうから声をかけられるようになりましたね。近年、例えば、骨格の未発達をはじめ、さまざまな健康的な問題を抱えて生まれてくるわんちゃんが増えました。つまり、昔に比べて、飼い主さんたちが愛犬の病気やヘルスケアと早くから向き合うことが増えたんです。例えば、おうちの子が1歳から脚が悪かったとしたら、飼い主さんは介護が必要になるだろうと想像しやすくなる。また、最近は室内で飼うことが当たり前になったので、一緒に過ごす時間が増えて、愛犬の変化に気づきやすくなったことも20年前との意識の変化に関係あると思います。

昔はペットの介護用品って少なかったですよね

以前は、介護が必要な年齢まで、わんちゃんが生きていなかったというのもありますね。だからこそ、2頭目を迎えるハードルも上がっていますが、飼い主さんたちがシニア期のことまで考えられる社会になってきました。それこそ、ここ4〜5年で介護用品に参入したいメーカーも増えてきましたね。

今後の目標を教えてください

ドイツのように、犬と一緒にどこにでも行けて、散歩の流れで電車に乗れるような社会になっていってほしいです。飼い主さん、わんちゃん、わんちゃんを飼っていない方もみんな安心して過ごせる社会にしたいですね。

もうひとつは、わんちゃんを看取ってあげる仲間、共有できる仲間になること。その子のことをなんでも相談できて、「この人がいてくれてよかった」と思ってもらえる存在、お店になっていきたいですね。

好きな犬とお仕事をされていて、プライベートとお仕事の境目があまりないように見えるのですが、息抜きってどうしているのですか?

おいしいものを食べたり、お酒を飲んだり。だから、毎日息抜きしてる(笑)。コロナ禍以前は、夫婦で旅行やフェスに行くのが好きでした。ラジオでインディーズのバンドを探して、見つけたらライブを聴きに行って、旅先でおいしいものを食べるとか。

一日のお気に入りの時間を教えてください

仕事の時間ですね。誰にも怒られずに、犬と触れ合っているんですから。飼い主さんから感謝していただくことも多くて、とてもやりがいを感じる仕事です。勉強することも多いですから、ずっとなにかを調べたり学んだり、毎日が楽しいです。今も作業犬訓練をしていたとき以来、トレーニングに取り組んでいて、日々勉強しています。新しいテーマを見つけて、調べ尽くしていくのが好きなんです。本当、考えてない時間がないです。

今日はすてきなお話ありがとうございました!

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PROFILE

松浦 結さん

シニアペットケアアドバイザー 講師
ペット介護用品アドバイザー 講師
MMPTペット介護士育成講座 講師
MMPT予防医学セラピスト・スペシャリスト 講師
犬のビワの葉温灸療法士 範士
ペット東洋医学アドバイザー
国際薬膳食育師

高校を卒業後、一般企業に勤めるが、幼少期からの犬とかかわる仕事をする夢をかなえるべく、20歳の時に動物専門学校に入学するが、どんな問題を抱える犬でも対応できるトレーナーになりたいと途中退学し、警察犬の訓練所で訓練士として修業を積む。たくさんの犬とかかわる上でトレーナーとしての観点から犬の精神的な落ち着きやメンタルケアの重要性、犬の健康維持の為にボディメンテナンスやボディケアが必要と考える。その後、25歳の時に家族が営むペットの介護用品販売、訪問介護など介護専門の''芦屋バティーズ”にて訪問ケア、ペットシッターの責任者として10年間現場でのケアに従事。
1万件を超える介護が必要なペットと実際に向き合い、色々なパターンの介助を実際に行う事で介護の現場で今必要なケアや介護状態の予防、疾患を抱える犬たちに行う日常のケアの大切さに気づき家庭でもできるホリスティックケア、予防ケアを中心にケアサービスの提供や、トリマー・動物看護士・開業に向けたプロ向けセミナーを関西、関東各所で行っている。
2019年に独立。幼犬〜のメンタルケアトレーニングと訪問介護、看護、トータルボディケアの「トータルペットケア kabs」開業。
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