nanowell Journal

まなべる ナノウエル

2022.09.16 まなべる ナノウエル #02

【野口美幸・清さん】日本中のアメリカン・コッカー・スパニエルたちがつながるコミュニティ

第2回は、全国最大級のアメリカン・コッカー・スパニエル(アメコカ)の集まり「コッカーわらわら会」を主催する野口美幸さん(通称:松ママ)と清さんご夫妻にお話をうかがいました。ときにキャンピングカーで全国を旅しながらアメコカちゃんたちと暮らすおふたり。飼い主さんたちのコミュニティをどのような思いで立ち上げられたのでしょうか。

今日は樋之助くん、竹之助くん、梅之助くんも一緒ですね。アメリカン・コッカー・スパニエルとの出会いを教えてください

美幸さん:最初に迎えたアメコカは先代犬の松之助ですね。犬と一緒に暮らすようになったのは、その前のマルチーズのももじからです。ももじを飼いはじめたきっかけは、夫(清さん)の心筋梗塞でした。心筋梗塞になって、医師から「リハビリとして歩きなさい」と言われたのですが、夫は「歩くのは嫌いです」と(笑)。そこで、「わんちゃんを飼ってみるのはどうですか」とアドバイスをもらったんですね。当時の家はペットが飼えなかったので、今の自宅を購入して、ももじを散歩のパートナーとしてお迎えしました。

心筋梗塞後の自宅療養期間が終わった後、ももじが家でひとりきりでお留守番する時間が増えました。お留守番の時間が長いのはかわいそうだねと話していたころ、偶然にペットの博覧会を訪れる機会があったんです。ゲージに入った犬たちが何十万円で売られているなか、それよりもずいぶん安い値札をつけられて、ひとまとめに40〜50頭サークルに入れられていたさまざまな犬種のパピーたちがいました。コッカーやジャック・ラッセル・テリアがいたのを覚えています。そのなかに、長い耳が垂れている犬がいたんです。耳が垂れている犬を見たことがなかったので、「なんていう犬種ですか?」とたずねたら、「アメリカン・コッカー・スパニエル」と教えてもらいました。「賢い子ですか?」と聞いたら、「とても賢いです」、「毛は抜けませんか?」と聞いたら、「全然抜けません」って言われたんですが、後からいろいろと情報がまちがった店員さんだと気がつきました(笑)。

その日はもちろんわんちゃんを買うつもりで来ていませんでしたが、いざ帰ろうとなると、どうしても気になって、さっきのサークルにいたアメリカン・コッカー・スパニエルに足が向きました。男性がその子を抱き上げているのを見て、「おにいさん、その子を買うのですか?」と聞いたら、「いいえ、買いません」と言ったものですから、夫が「じゃあ、僕が飼いますから」と言ってお迎えしました。それが松之助で、最初のアメコカとの出会いです。

それから、樋之助くんをお迎えしたのですね

美幸さん:そうですね。実は、樋之助は保護犬なんです。あるとき、松之助を飼っていることを知った夫の会社のひとが、「野口さんは、アメリカン・コッカー・スパニエルを飼っていますよね。お正月だけでよいので、アメリカン・コッカー・スパニエルを1頭預かってくれませんか?」と連絡があり、夫の仕事帰りの車にいきなり樋之助が乗せられて(笑)、預かることになりました。厳しい冬を迎える前の12月23日のことでした。その方は育児放棄された樋之助をみかねて保護し、飼い主を探していました。事情を聞くと、元の飼い主さんのおうちで、携帯電話のコードを噛んでしまったことをきっかけに見放されていたそうです。まだ生後8ヶ月にもかかわらず、ずっと寝るところもなく、車の中で生活させられていたとのことでした。樋之助との出会いは、私が保護活動をはじめるきっかけになりました。樋之助と出会っていなかったら、保護活動をしようとは考えなかったと思います。

清さん:預かった時点では、まだ飼うつもりはありませんでした。うちに来て、一緒に散歩に行こうとしたら、樋之助は歩かなかったんです。外に連れ出されたことがなかったのだと思います。1日を一緒に過ごせば、情が湧いてしまいますよね。そのあと、すぐに獣医さんに診てもらって、健康診断をして登録をしました。すると、樋之助が不思議と翌日から歩きはじめたんです。犬って、ここで暮らしてよいか、わかるんですね。

美幸さん:それ以来、樋之助は13歳のときに義眼手術をしましたが、16歳の現在まで健康でいてくれています。

竹之助くん、梅之助くんとの出会いも教えてください

美幸さん:先代コッカーの松之助が亡くなるころに、竹之助をお迎え、その後、ももじが亡くなったあとに、梅之助がやってきました。

清さん:竹之助と梅之助は兄弟なんです。

美幸さん:先代犬が亡くなったとき、私も夫もとても落ち込みました。でも、以前からもう1頭保護犬を迎えたいねと話していたこともあり、探していました。そんなときに、松之助のふた月命日に、お友達から3匹が揃ったお人形が届いたんです。そのときに思い立って、インターネットで初めて「アメコカ 子犬」で検索したら、マズルが長くて目つきが悪い赤ちゃんが目に入りました。松之助にそっくりでした。すぐに連絡をして、「今からうかがってもよいですか?」と約束をとりつけて、愛知県までその日のうちに行き、そのまま引き取ることになりました。それが竹之助との出会いでした。

竹之助は、ブリーダーさんのところにいるときに、テレビ番組に出演したことがあったそうで、後日、ブリーダーさんからの年賀状に「竹ちゃんの弟がテレビに出ます」と書かれていて、梅之助の存在を知りました。たまたま岐阜県にキャンピングカーを探しに行った際に、ブリーダーさんのもとに立ち寄り、梅之助と出会いました。その日のうちにブリーダーさんと話し合って、兄弟ともにお迎えすることを決めました。

そのころからキャンピングカーを探しておられたのですか?

美幸さん:いえ、もうそのときには、キャンピングカーに乗っていました。最初は車中泊からはじめて、アメリカ製の大きな車にも何度か乗り換えましたが、夫が長旅に行って帰ってくるたびに、「この車は狭い」と言うんですね。松之助が亡くなったときに、夫がとても落ち込んでしまい、そこから脱出するために、キャンピングカーショーに行って、今の車を契約しました。それで元気になりましたよね。いつも人生の上がり下がりを犬たちが支えてきてくれて、助けてもらっています。

保護活動はどれくらいの期間されているのですか?

美幸さん:樋之助が来てからですから、13〜14年くらいですかね。樋之助が2歳になったくらいから、ブログを通じて、コッカーを飼っているひとたちとのつながりが生まれました。そこから、保護活動を知った知人たちから情報をいただくようにもなって、ブログなどを通じて引き取り手を探すお手伝いをしていました。今は引き取ってくださるかたの個人情報などにも配慮して非公開で活動しています。

わらわら会のはじまりについて教えてください

美幸さん:コッカー仲間のオフ会は、わらわら会ができる前から開かれていました。私がいわゆる「オフ会」に本格的に携わるようになったのは、東日本大震災のころです。当時、仕事の都合で私は倉敷に住んでいて、大阪の知人に向けて、震災への寄附を目的とした倉敷チャリティツアーを開催したのが始まりですね。その翌年、東京のコッカー仲間がバスを借りて関西に来るという話になり、セッティングを頼まれました。わらわら会と名前をつけたのは、そのときです。

わらわら会の名前の由来を教えてください

美幸さん:わらわらしたいからです(笑)。わらわらと、何の縛りもなく。実はコッカーを飼っているひとって、意外といないんですよね。例えば、町なかで散歩していると、プードルや柴犬にはよく出会いません? コッカーはなかなか見かけないんです。

10年目を迎え、今ではわらわら会という名前が全国に広まりました。ときには、「わらわら会という名前を使っていいですか」とご連絡をいただいて、「もちろんです。なにかあれば、手伝うね」といった感じで、各地域でもわらわら会ができていて、うれしいです。

コッカー仲間がたくさんいらっしゃるので、ご近所にもコッカーを飼っているかたが多いのかと思いました

美幸さん:いないんです。コッカーは、病気が多い犬種なんですね。ガウガウする子も少なくありません。だから、なにかあったときに助けあったり、相談しあったりできるつながりがとても大切です。今は、わらわら会とは別に、200人ほど関西のコッカーの飼い主が集まってLINEグループをつくっています。そのグループでは、遊びの告知もしますが、病気や育てかたの相談も行なわれています。専門知識を持っていたり、経験があったりするひとたちが、悩みや相談に答えてくれる関係ができているんです。ある子が血液の病気になったときに供血してもらったケースもあり、本当に心強いコミュニティです。

今度、わらわら会では、全国から浜松に集まられるのですよね

美幸さん:はい。関東では、昔ながらのオフ会がなくなってきたそうで、気軽に集まりたいという声がありました。そこで、日本のおへそ、真ん中ということで、浜松で開催しようということになりました。本当は去年に開催したかったのですが、コロナ禍で見送りました。今年は、会場の都合で、集まっていただける車の台数が限られてしまうのですが、「東西南北わらわら会」を2022年10月に開催予定です。

これだけ幅広い活動をされていて、お仕事とどのようにして両立していらっしゃるのですか?

美幸さん:仕事とは別物ですね。ちょっと前までは、夢中になると、夜も寝ずにやっていました(笑)。最近はちゃんと寝るようにしています。でも、やりたいことはたくさんあります。例えば、パピー会という集まりができたのですが、コロナ禍でなかなか集まれませんでした。竹之助や梅之助のような今5、6歳の世代が多くなってきましたが、赤ちゃんって、赤ちゃん同士で遊ぶほうがよいですよね。その年代しかできない遊びもあるし、その年代ならではの成長のためにしたほうがよい遊びもあるし。パピー会、ぜひ続けていきたいです。

やらなきゃいけないことがたくさんありますね!

美幸さん:楽しいことがたくさんね! 全部、私の思いつきです。みんな、思いつきに賛同してくれるので、ありがたいです。わらわら会自体が、本当に思いつきでしかないんです。「今回はこういうことするよー」と声をかけたら、「えー」って言うひとはいなくて、「言い出したらしゃあないなあ」と協力してくれます。

今、わらわら会には、スタッフさんが20名以上います。イベントの準備は私がしますが、イベントがはじまったら、すべてお任せしています。私にとってとても心強い仲間です。

わらわら会や保護活動以外に、わんちゃんたちとたくさんお出かけされていますよね。一番印象に残っている場所を教えてください

美幸さん:私のなかでは、北海道が一番ですね。松之助と暮らしはじめたころ、インターネットで「アメリカン・コッカー・スパニエル」と検索すると、北海道のコッカーさんがよく出てきました。北海道のオフ会も多くて、近所にいないコッカーが北海道に行けば会えるんだと思っていました。そこで、北海道に行きたいから、北海道のコッカーさんたちのグループに入れてもらいました。夫は定年した翌月に北海道に行っていました(笑)。それからコロナ禍になるまで、毎年夏は犬たちと北海道で過ごしていました。

清さん:2019年は、6月15日に車で家を出て、帰ってきたのは9月10日でした。関西が暑い時期、北海道の稚内に1ヶ月滞在していました。気温が15、16度で涼しいんですね。帰りも車で、オホーツクを下って……。

10年目を迎えたわらわら会。これからどんなことをしていきたいですか

美幸さん:2022年は10月に東西南北わらわら会、北海道わらわら会、11月と12月に大阪、クリスマスわらわら会と予定していますが、もっともっと楽しいことを重ねていきたいです。2年前くらいから、「手作りの会」という教室のような取り組みをはじめました。わらわら会の仲間には専門的な技能をもったかたがたくさんいらっしゃいます。そういったかたを先生としてお招きして、例えば、トールペイントやポーセラーツの教室を開いていただいています。普通の教室だと、トールペイントをはじめるとき、花から描くことが多いと思います。でも、私たちは犬を描きたいので、犬を描くことを教えてもらいます(笑)。コロナの影響で少し止まっていましたが、徐々に再開しています。夏祭りもしたかったのですが、今年もあきらめました。夏祭りそのものに大きな意味があるというわけではないのですが。

清さん:そう、大きな意味とかではなくて、楽しいからやるんだよね。気負って構えてかかると、グループって続かない。遊びで楽しくやるから、続けていけるんです。お金や利害がからんだりしても、うまくいかないものだよね。

美幸さん:そうだね。わらわら会では、イベントの際に参加費をいただきますが、経費以外で余ったお金はすべて寄附しています。参加費をどう使っているのか聞いてくるひとはひとりもいないんです。最初の何年間は持ち出しで開催していましたが、あるとき、6千円浮いたことがありました。そのときは、そのお金でドッグランを借りきって、手伝ってくれたスタッフのわんちゃんたちに遊んでもらいました。今は、わらわら会の前に1時間ほど、スタッフのわんちゃんたちが遊べる時間を設けていますね。スタッフはみんなボランティアなんです。お金が余らないときは、参加記念品を一般販売して、その売上を寄附させていただいています。

野口さんの今後の目標を教えてください

美幸さん:私個人としては、この子たちを最後まで看取り、天国に送り届けることです。将来的には、お金も体力もいることですが、この子たちを見送った後に余力があれば、行き場のなくなった老犬を看取る場所になれたらと考えています。飼い主も高齢化していますから、最期まで看取られないわんちゃんも今以上にたくさん出てくるのではないでしょうか。飼い主と犬の別れや看取りかたについては、さまざまな思いがありますね。

一日のお気に入りの時間を教えてください

美幸さん:夜、夫が樋之助と、竹之助か梅之助のどちらかを連れて、キャンピングカーで寝るんです。家に残った1頭といちゃいちゃするのが、一番大切な時間です。3頭いると、一対一の時間がなかなか取れないんですよね。それ以外は、週に1回トリミングするときも一対一になれますね。やっぱり一対一の時間が楽しくて、大事にしています。

一対一で向き合う時間、とても大切ですよね。今日はたくさんのお話、ありがとうございました。

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PROFILE

野口美幸・清さん

2002年の夏、夫(清)の心筋梗塞のリハビリをきっかけにマルチーズのももじと出会う。翌年アメリカン・コッカー・スパニエルの松之助との出会いをきっかけに、夫妻でアメコカに魅了される。2011年からアメリカン・コッカー・スパニエルの飼い主を中心とした集まり「コッカーわらわら会」を主催。現在、妻(美幸)は松ママの愛称で呼ばれることがあり、アメコカ3頭と暮らしながら、キャンピングカーで全国のアメコカ仲間とつながっている。わらわら会は去年10周年を迎え、今後もアクティブに活動を広げていく予定。保護活動にも2009年頃から取り組んでいる。
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