nanowell Journal

まなべる ナノウエル

2022.11.22 まなべる ナノウエル #04

【小川直子さん】アンティークな空間で、猫と暮らすジュエリーデザイナー

第4回は、「Lana Swans」ジュエリーデザイナーの小川直子さんにお話を伺いました。小川さんは、企画、デザイン、制作まですべてを手がけるシルバージュエリー作家です。アトリエ併設のご自宅で、アンティークに囲まれた空間での猫との暮らしや仕事、クリエイティビティについてお話しいただきました。

最初に、小川さんのお仕事について教えてください

2010年に「Lana Swans」というアクセサリーブランドを立ち上げました。デザインから制作まで一人でやっています。

最近はメディア掲載やポップアップストアも多いですよね

はい、ありがとうございます。最近は、地方も含めてセレクトショップで、ポップアップさせていただくことも増えました。

自然をモチーフに制作されることが多いのですか?

そうですね。自然が多いですが、以前のシーズンでは「Pool(プール)」というテーマにしたこともありました。プールの手すりをモチーフにピアスをつくったり……。プールの手すりの見た目がかわいくて、すごく好きなんです。毎シーズン、テーマを決めています。今期のテーマは、「Shell(貝殻)」です。小さいときから貝殻を集めることが好きで、水族館で親に買ってもらったものや、旅先で拾ったものを手元に置いていて、それを見ながらアイデアを練りました。

ジュエリーデザイナーになったきっかけを教えてください

小さいときからものをつくるのが好きで、幼稚園からビーズアクセサリーをつくっているような子でした。高校も工芸高校に進み、服飾の専門学校に行きましたが、専門学校を卒業してから、服飾よりも子どものころから好きだったアクセサリーづくりをしたいと考えるようになりました。彫金を少し学んで、あとは独学で今に至ります。

でも、実は立体はあんまり得意ではないと自分では思っています。「立体よりも平面のほうが得意だな」と絵描きだった父に言われたことがあって。だれかがつくったものを見たときに、ただ美しいと思うのではなく、「自分だったらどうするかを常に考えろ」とよく言われていました。それが強く印象に残っていて、ものづくりの基礎になっています。

はじめてつくった作品はやっぱり思い出深いですか?

最初は、今やっているようなシルバーではなかったんです。立ち上げた2010年ごろは、パーツを買ってきて組み合わせてつくっていました。ビジューをつかったものなど、キラキラしたものが多かったように覚えています。すでにあるパーツを買ってつくるのが物足りなくなってきたころ、ハンドメイドブームがやってきて。埋もれたくないという気持ちと、オリジナリティをもっと出したいと考えるようになり、今のスタイルに変更しました。シルバーのアクセサリーを身につけるのが好きだったこともありますが、シルバーは、自分の好きなかたちを一からつくれるんです。

外にアイデアを探しにいくことはありますか?

そうですね。インプット重要ですね。写真を撮ることが好きなので、散歩がてら写真を撮ったり、美術館に行ったりします。アンテナはいつもはっているように思います。図書館に行くのも好きです。調べものをして、いろいろな謎が解けるのが楽しくて、それが制作につながっています。

ぺっちゃんとの出会いについて教えてください

前に飼っていたゼルが亡くなって数ヶ月経ったころ、友人から保護猫ちゃんの里親募集を教えてもらいました。すごく気になっていたら、ぺっちゃんの写真を送っていただいて、心から離れなくなりました。すると、「会いませんか?」とお声がけいただき、思い切って会いに行きました。ゼルが亡くなってから間がなかったので迷いもあったのですが、やっぱり猫との暮らしって楽しいですよね。一度きりの人生だから、楽しい時間が長いほうがいいなって思って、会いに行くことを決めたことを覚えています。それに、ゼルが亡くなったあとも、つい道端の猫に話しかけることがあって、自分は本当に猫が好きなんだなあと感じていました。

多頭崩壊で育児放棄されていたそうで、兄弟2匹、保護されたとのことでした。大阪のボランティアさん経由で、九州からはるばるやってきました。ぺっちゃん以外の猫ちゃんはみんな里親が決まっていたこともありますが、写真を見ていたぺっちゃんとの縁を感じていたので、お迎えすることを決めました。ちなみに、兄弟は大阪にいて、わんちゃんと暮らしています。わんちゃんと仲良しだそうですよ。ぺっちゃんが保護されていたおうちは、2匹のプードルと1匹の黒猫がいたので、ぺっちゃんは多くの動物と触れ合っていたみたいですね。人に慣れていることにも関係しているように思います。

ぺっちゃんの名前の由来を教えてください

宝石のペリドット(カンラン石)です。洋風な名前にしたいというのと、自分がデザイナーということもあって、石の名前からつけようと思いました。石が好きなんです。ペリドットの名前が持つ意味とひびきから決めました。ペリドットの意味は、「暗闇に光をもたらし、ポジティブな力を授ける太陽の石」なんです。

先代猫のゼルくんについて教えてください

はい、もちろんです。まず、名前の由来は、チョコボールのキョロちゃんの金のエンゼルとか、銀のエンゼルってありますよね、あのゼルなんです(笑)。ジェルじゃなくて、ゼル。深い意味はないんですが(笑)。ゼルという響きのとおり、力強い猫に育ちました。肩幅が広くて、首も太かったんです。会うひと会うひとに、「でかっ」って言われていました(笑)。おでぶちゃんではないんですが、骨格ががっしりしていました。よく走り回っていて、筋肉むきむきでした。ぺりよりも大きくて、6kgくらいありましたね。とても賢い子で、私の言葉も結構理解していると感じていました。「大好き」って言うと、必ず顔を近づけてくれるんです。何回やっても絶対してくれてたんです。

ゼルくんとのお別れについてお聞きしてよいですか?

12年半、一緒に暮らしました。Lana Swansを始める前から一緒に暮らしていて、12歳で亡くなりました。友人が勤めていた美容室のかたから譲っていただきました。そのおうちは、犬も猫もたくさんいて、新しく生まれた子がいるよと教えていただいたんです。黒猫は人気がないって言われていたのですが、私は黒猫が好きだったので、黒猫のゼルとは運命的な出会いでした。12歳の誕生日の少し前に腎臓の病気が発覚して、手術をしました。無事に誕生日を迎えられたねと喜んでいたんですが、腎臓のひとつを摘出したので、もう片方の腎臓に負担がかかってしまい、術後半年ほどで亡くなってしまいました。

ぺっちゃんとゼルくんとの暮らしで違うところってありますか?

大きくはあまり変わらないですね。ただ、ゼルは賢いけど、わざと雑誌のうえでおしっこをしたり、いたずらをしたりと、結構手がかかる子でした。ぺっちゃんは何も教えなくてもなんでもできるんですよ。最初のおうちでしっかり教えてくださっていたんでしょうね。おトイレも失敗したことがないし、最初からスムーズでした。お留守番もしっかりできます。あと、ぺっちゃんは爪とぎは爪とぎでします。家具に残っている爪あとは、ゼルですね(笑)。ただ、ぺっちゃんは、モノを落とす癖があるので、ゼルのときに比べて、モノを飾りにくくなりました。ぺっちゃんは、目に入ったものをどんどん落としていくんです(笑)。最近、あまりキッチンや台に登らなくなってきたので、少しずつ飾りはじめました。落ち着いてきましたね。

猫らしいなって思うのはどんなときですか?

きまぐれなところですね。人には慣れているのですが、全然近くに来ないこともあって。人が来ているときは一緒にいるんですが、ふたりきりのときは、割と別々の世界です。遊ぶのは大好きなので、遊ぼうと言うと遊んでくれます。仕事をしているときは、アトリエまでおもちゃを持ってきたりします。おもちゃについている鈴を鳴らしながら走ってくるんです。意外と猫って、甘えてなついてくれるんですよね。

今年の5月にはナノウエルの撮影に協力していただきました

わんちゃんとにゃんこの撮影を自宅でしていただけるなんて、こんな楽しいことないなと思って。撮影前はちゃんと撮影が務まるのか心配でした。わんちゃんが家にくるのも初めてだったので、ぺっちゃんがどんなふうに反応するのかなと思っていました。カメラマンさんに良いお写真に仕上げていただいてよかったです。

いろいろなことがお仕事のインスピレーションになると思うんですが、ぺっちゃんがインスピレーションになったことはありますか?

あんまりないです(笑)。本当は「あります」って言ったほうが話は広がるのにすみません(笑)。ただただ癒やしなんです。集中していると休まずに仕事をしてしまうのですが、ぺっちゃんが遊ぼうと来てくれるので、休もうかなと思うんです。マネージャーですね。

アトリエで作業しているとき、ぺっちゃんはどんなふうですか?

まず私がアトリエに行くと、てってってと後ろについてくるんですよ。仕事を始めてしばらくすると、私はぺっちゃんのことを忘れてしまうときがあるんですけど、どうしてるかなあと思ったころに、しゃんしゃん鈴を鳴らしておもちゃを持ってきてくれます。ほいっと置くので、少し遊んであげて、そのあとは足にからまってきて、けりけりすることもあります。丸椅子に座って仕事をしているのですが、必ず背中の後ろのスペースに乗ってきて、後ろから私の肩に手をかけて、耳元で「ひゃあ」って言うんです。にゃあって言えないんですよ(笑)。一通り終わったら、アトリエでお腹を上に向けて寝たりしています、お決まりなんです。

作業台の上にはあまり乗らないようにさせていますね。でも、アクセサリーの加工に必要な磨く工具の先端部分を挿しているのですが、小さいときから、それを1本ずつ取っては落とすのがブームみたいです。

ぺっちゃんには、朝のルーティーンがあるんですよね

ぺっちゃんは早起きで、私を起こすときに、素肌のうえでふみふみをしながら、あごをチュッチュしてきます。朝と夜寝る前と、必ずするんです。最近は歯が立派になって痛いんですが(笑)。そして、朝ご飯を食べて、窓からお外を見るっていうのがルーティーンですね。最近は、窓ガラスをとんとん叩くことも多くて。外を歩いているひとに反応しているのかなと思っていたのですが、夕方や夜もするんです。ブラインドを開けてくれと言うので、開けてやると、ガラスをとんとんしはじめるんです。

小川さんの今後の目標を教えてください

一番は、楽しく仕事をすることですね。ぺっちゃんと楽しく過ごしながら、良い気持ちでものづくりをしていきたいです。もっといろいろな人にLana Swansを知ってもらって、たくさんのひとをジュエリーで幸せにしたいです。実は、ここにある家具や食器などは、私のひいおじいちゃんや祖母や母が使っていたものを譲り受けています。長く使いこむと味が出てかっこよくなるし、気に入っていて大切にしています。そんなふうに、私もタイムレスに長く使ってもらえるようなジュエリーをつくっていきたいです。

ぺっちゃんがいるお仕事と暮らしの空間、素敵ですね。最後に、一日のお気に入りの時間を教えてください

朝起きて、ぺっちゃんにご飯をあげて、朝の支度をしたら、コーヒーを淹れるんです。ぺっちゃんは窓辺で外を眺めていて、私はコーヒーを飲みます。コーヒーを片手に、ゆったりと窓辺のぺっちゃんを見るのがお気に入りの時間です。朝はばたばたしちゃう性格なので、その時間が幸せで、そんな時間を大切にしながら暮らしています。

今日はお話、ありがとうございました!

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PROFILE

小川 直子さん

ジュエリー作家

2010年アクセサリーブランド、「Lana Swans」を立ち上げる。2015年、シルバージュエリー作家として活動を始める。曽祖父、祖母、母から代々受け継いできたものからできたアンティークな空間で、いつまでも愛されるタイムレスなジュエリーをデザインから制作まで自身で行っている。先代猫、ゼルくんの死を経験しながらも、猫と暮らす人生の楽しさに触れ、現在ぺりちゃんと新しい生活を始めている。

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