nanowell Journal

まなべる ナノウエル

2023.08.28 まなべる ナノウエル #11

【小銭裕子さん】わんちゃん同伴OKなプライベートヘアサロンができるまで

大阪・中崎町にあるプライベートサロン「AMILI」は、わんちゃん同伴OKなヘアサロンです。おしゃれな木製ドアを開けると、まず穏やかに挨拶をしてくれるのは店長であるパグのanちゃん。今回は、AMILIのスタイリストである小銭裕子さんに暮らし方や働き方についてお伺いしました。わんちゃんOKなサロンになるまで、たくさんの偶然やご縁のストーリーがありました。

小銭さんが美容師になろうと思ったきっかけを教えてください

めちゃくちゃリアルに言いますと、高校生のときにワッフルアイロンを買ったことです。休み時間に、私の前に行列ができるぐらいに「ワッフルアイロンしてほしい」と友だちに頼まれました。それが楽しかったことがきっかけで、服飾や美容師か、クリエイティブな仕事をしたいと思うようになったんです。そして、専門学校の見学でパーマ体験などをしたときに、美容師の道に入ることを決めました。

もともと、ファッションが自由な高校だったんで、ヘアスタイルは当時からソフトドレッドとかでしたね。偏差値の高い高校でしたが、ヘアスタイルが自由だからという理由で、めっちゃ勉強しましたね(笑)。

とにかくワッフルアイロンを一個買ったことで、人生が変わりました。でも、思えば、幼い頃から、親に貧乏パーマ(ねじりパーマ)をせがんで、ちゃんとやってくれないと、「保育園に行かない!」って言っていました。髪の毛が崩れたら、保育園の端っこで体育座りしてすねちゃうような子だったらしいです。

わんちゃん同伴OKの美容室をはじめたのはどうしてですか?

以前働いていた美容室で、シニア犬を飼っているお客様がいらしたんです。「今日、わんちゃんの体調が悪くて」と、度々キャンセルされることがありました。その子の調子が良い日もリタッチだけで足早に帰っていかれていたんです。そこで、今の店になってから「わんちゃんOKな物件なので、連れてきてくださって大丈夫ですよ」とお伝えしたら、とても喜んでくださいました。近隣に住まれているかただったので、移動もわんちゃんに負担が少ないかなと思って。その子が第1号のお客さんでした。ここのお店に一緒に来てくれるようになって3ヶ月後にわんちゃんは亡くなりましたが、「最後に一緒に美容室に行けて良かった」と言ってもらえたことは強く心に残っています。

それから、他のお客様にも「anちゃん、いてもいいよ」と言っていただいて、anちゃんと一緒にサロンに来るようになりました。仕事が長時間に及ぶので、お留守番なしで一緒にいられるのは大きいですね。

お留守番が苦手なわんちゃんや、体調が悪くて放っておけない子がいますよね。そういったわんちゃんたちに来てもらってもいいですよ、とお伝えするようになりました。他には、とても忙しい人も。帰宅後にお散歩するのはハードですよね。美容室の行き帰りに散歩を兼ねてしまえば、お客様の負担も減らせるかなと。ただ、もちろん皆さんがわんこ好きというわけではありませんから、わんちゃんが苦手なお客様にもお越しいただけるようにしています。

AMILIをオープンするとき、動物OKな物件を探されたんですか?

本当にご縁だったんです。たまたま先輩がここでヘアカラー専門店をやっていたのですが、使っていない時期が長かったので、先輩から「使っていいよ」と言っていただいて。anちゃんとのお散歩コースにあるのでいつも気になっていましたし、その先輩のお店も有名でした。新型コロナの1年目ですね。前のお店を辞めるつもりは全くありませんでしたが、なぜか数週間後にはもうこの店に立っていました。

隣の長屋に住んでいらっしゃる方もわんちゃんを飼っていらして、わんちゃんは大丈夫だと言っていただいていました。中崎町はサロンもたくさんあるので、個性のひとつになるかなとも考えていました。

1階には4席ありますが、コロナ禍の当時は、隣の席に他の人がいるだけで、リタッチだけで済まされるお客様もいるくらい、美容室に来ることを怖がられるかたも多かったんです。そこで、1対1のプライベート空間で広々過ごしていただくかたちにして、少しでも安心してもらえるようにしました。

結果的に、anちゃんの留守番をなくしたいという私の目標が叶いました。本当にご縁が導いてくれましたね。そして、anちゃんが看板犬になりました。私は役職があまり好きじゃないんです。以前に店長も経験していますが、スタッフと同僚のような立ち位置でいたいので、私は平社員、店長はanちゃんに任せることにしました。anちゃんがいる今のスタイルはお客様あってのことですから、その気持ちを忘れたくありません。

anちゃんとはどのように出会われたんですか?

実は、私はもともと犬があまり好きではなかったんです。インコしか飼ったことがなくて、あとはにゃんこを拾ったことがあるくらいでした。ぐいぐいくるわんちゃんがむしろ苦手なほうだったんです。

昔同棲していた彼のお母さんは、老後にパグを飼うことを夢見ていました。お母さんが末期がんになって、どんどん衰弱されていくなかで、最後の親孝行が何か考えて、亡くなる3ヶ月前にanちゃんを飼いはじめました。当時の私はanという名前で働いていたんです。それでお母さんがつけようと準備していた名前ではなくて、私の名前をつけてくれました。

お母さんは抗がん剤治療をしていたので、anちゃんは飼い主と触れ合えない状態だったんです。そして、anちゃんと一緒に暮らせたのは、入院する前の2週間だけでした。その頃のanちゃんの家は広島にあり、お母さんが亡くなった後は動物病院に預かってもらっていました。それを聞いた私のお客様から「それはありえないよ。犬は人の子どもと同じなのに、0歳なのにかわいそうだよ」と教えていただき、すぐに引き取りに行きました。

その後、彼と同棲を終えることになり、anちゃんはお母さんの形見だから、彼の元に残すことにしていました。でも、私が去る日に、人生で初めての血便をしたんです。「anちゃんが血便を出してる!」と戸惑う私を、迎えに来た父に「もうお前の犬じゃない」と説得されて……。大阪にある実家に帰ったのですが、そのままに放っておけなくて。当時、実家もわんちゃん不可の物件だったので、急いで一緒に暮らせる物件を探して、準備を整えて迎えに行きました。生まれたばかりの頃から一緒ではありましたが、これで本当の自分の家族として暮らすことになりました。

お客様の助言と血便のおかげで、anちゃんはここにいます。今となっては、父と母は連れ立って、毎日anちゃんたちの散歩をしてくれています。

louisくんとはどのように出会われたんですか?

ご近所でフレンチブルドッグとお散歩されているかたが、うちの店の前で「わんこがいる!」と足を止められたという、ひょんなことからお客様になりました。そのフレブルの白州(ハクシュウ)ちゃんと、これまた近所のフレブルのニコラスさんとの間にできたのが、louisくんなんです。妊娠中のエコーに映っているのが4匹だから、無事に生まれたら1匹を引き取ってほしいとそのお客様が仰ったんです。

私は多頭飼いをできる自信がありませんでしたが、私の夫はフレブルを飼っていたことがありました。実は、夫と出会うまでにいくつかの条件があったんです。①パグを飼ったことがない人。パグを飼っていた人なら、anちゃんと暮らすと、自分のパグを思い出してしまうから悲しくなってしまいますよね。②フレブルを過去に飼ったことがある人。パグって、すごくいびきがうるさいんです。パグよりもいびきが大きい犬種なら、フレブルだなと。③私よりも帰宅する時間が遅く、かつたまに早くも帰れる仕事の人。この条件に全部あてはまった人が今の夫なんです。

そんな背景もふまえて、お客様である白州ちゃんのママから「パートナーさんにもフレブルの知識があるし、おふたりに飼ってほしいんです!」と声をかけていただいたので、大晦日に会いに行きました。実はその日に薦められたのはlouisくんとは別の子で、とてもお利口さんでした。その子に決めようとしたら、louisくんが怒って暴れ出してアピールしはじめたんです。それまでは、へそ天して、ずっと寝ていたのに(笑)。そこで、夫が「この子、最後にこんなにがんばったんだから」と言って、louisくんを選んだんです。偶然にも、louisくんや兄弟たちの誕生日は夫と同じなんですよ(笑)。

お店では普段、2匹はどんな感じで過ごしているんですか?

anちゃんはもともと吠えないので静かです。他のわんちゃんにも近づいていきませんから、看板犬特化タイプですね。louisくんは、2階のケージで私が上がるときにたまにおこぼれをもらっていますね。2階で吠えることはほぼありません。

anちゃんは、私の手が空いていないときに、ドアのベルがなったら、トコトコトコとお迎えをしにいってくれます。様子を見てハウスするので、適度な距離感で接客をしてくれるんです。ただ、その分のごほうびを求めてくるのですが(笑)。例えばヘアカラー中は求めてこなくて、手袋を脱いだ瞬間にごほうびと言ってくるので、よく観察していると思います。

シャンプー前には、「わたし、上乗りましょうか? いらないですか?」という顔で確認をしてきて、たまにシャンプー中のお膝をゲットしています。お膝オプションですね(笑)。もちろんわんちゃんが好きな人に限りますが、実家でわんちゃんを飼っているけれど、日頃わんちゃんと触れ合えていない人にも喜ばれていますね。

お店ではお客様のわんちゃんは待っている間、どんな風に過ごしていますか?

大人しく待っている子もいれば、お店の中を散策する子もいます。カットやシャンプー中、膝に乗せる方もいらっしゃいます。わんこ用のクロスをつけて、カットした髪の毛がつかないようにしていますね。また、わんこを膝に乗せるためのお客様用ブランケットもご用意しています。記念にお写真撮ったりもして、楽しんでいただいています。

louisくんは他のわんちゃんとよく遊びます。わんちゃん同士でドッグランのようになってる時間もあります。もちろんトイレ問題もあるので、1階と2階で分けて使っています。フレブル、トイプードル、チワワ、シーズー、パグなどいろんな犬種の子たちがきてくれます。先日はゴールデンレトリーバーも来てくださいました。

忙しいお客様は、美容室に行く時間をがんばってつくらないといけませんよね。それはつまり、わんちゃんと一緒に過ごせるはずの時間を削って、美容室に充てるわけですよね。AMILIでなら、美容室での時間もわんちゃんと一緒に過ごせるので良いと思います。

最後に、一日のお気に入りの時間を教えてください

家に帰って、ふたりの足を洗って、お手とおかわりをさせて、ご飯あげて……のときですね。家に帰ったらご飯がもらえるので、店でレジ閉めをしていると、ふたりしてずっと待っています。

夜にレッスンなどの仕事が入るときは、ふたりともまだ帰れないと悟っていますね(笑)。だから、家に帰ってご飯をもらうことを本当に楽しみにしているんです。大好きなヤギミルクを飲んでいるところを見るのも、かわいいなあとすごく癒やされます。

 

今日はお話、ありがとうございました!

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PROFILE

小銭裕子さん

もともと犬が苦手だったにも関わらず、たくさんのご縁が繋がり、大阪・中崎町にあるわんちゃんと同伴できる古民家ヘアサロン「private salon AMILI」を営む小銭裕子さん。店長の an ちゃんと警備員の louis くんが看板犬を務めています。お客様と愛犬たちの寛ぎの時間を大切にされています。

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