【積水ハウス:沢辺泰代さん・植山生仁さん】パートナーとの住まいと暮らしを考える(前編)
わんちゃんや、ねこちゃんと幸せに暮らすための住まいについて、住まいの専門家である積水ハウス・住生活研究所の沢辺泰代さんと植山生仁さんにお話を伺いました。住生活研究所では、愛犬愛猫と飼い主、両方の視点から住まいを考えた「ディア・ワン」という家づくりのコンセプトを開発されています。住まいづくりの体験型ミュージアム「Tomorrow’s Life Museum 関西」の2つのモデルハウスで、パートナーとの暮らしや住まいにまつわるたくさんの疑問に答えていただきました。前編では主にお仕事について、後編ではパートナーとの暮らしや住まいに関するヒントをお話しいただきました。
【後編を読む】パートナーとの暮らしや住まいに関するヒントについてお伺いした後編はこちら
住生活研究所について教えてください
沢辺さん: 2018年に幸せを研究するために設立された積水ハウスの研究所です。人の幸せだけではなく、一緒に暮らす動物たちも幸せになれるようにと考えてきました。
植山さん:積水ハウスのグローバル・ビジョン”「わが家」を世界一幸せな場所にする”につながっている研究部門なんです。「住めば住むほど幸せ住まい」をキャッチフレーズに、住めば住むほど幸せになっていくような家や暮らしかたを考える部署です。
人と動物たちが幸せに暮らせる住まい「ディア・ワン」のコンセプトはどのように生まれたのですか?
沢辺さん:ディア・ワンという名前には、「大切なもの、愛するもの」という意味を込めています。わんちゃんやねこちゃんなど、私たちと一緒に暮らす動物たちは、家族同様に大切な存在です。人間については人間工学などの研究が進んでいますが、人間とは違う習性を持つ彼らについてはもっと勉強をしなければなりません。お互いに幸せになってほしいという願いから、動物側の視点でさまざまなことを調べてきました。その結果が「ディア・ワン」に詰まっています。
おふたりが今のお仕事をされることになったきっかけを教えてください
沢辺さん:研究所には設立時から所属しています。この研究を始めたのは、やはり動物が好きだからでしょうか。ペットの研究をするにあたっては、「この子のために」と考えられることが大切だと思うので、植山さんのような仲間にも入ってもらいました。
植山さん:自分自身がこの子(柴犬のメイちゃん)を飼っているので、自分の家でさまざまなことを試行錯誤しています。そういった経験を仕事で活かせると感じています。
わんちゃんや、ねこちゃんの性質など、どのように日頃から勉強されているのですか?
沢辺さん:わんちゃんや、ねこちゃんにインタビューしても答えてくれるわけではないですから、本能や習性を勉強するしかないんですよね。片っ端から文献を読んで、もう本当に色々なことを調べてきました。家で一緒に暮らすための動物側の要望の参考に情報を集めています。例えば、「わんちゃんが吠えて困る」というお悩みの声がよく寄せられます。でも、わんちゃんからすれば、「怪しいやつがいるぞ」など、家族に知らせようとお仕事をしてくれているんですね。家庭犬としては、そのお仕事は必要ないかもしれないので、彼らがお仕事をしなくてもよいような間取りを考えることが私たちの仕事になるわけです。
植山さん:文献を読んでいると、勉強になるのはもちろんですが、うちの子と同じこともあれば、違うこともあります。勉強をしながらも、一方で、自分のパートナーを観察しながら切磋琢磨しなければなりません。人間と同じで、わんちゃんや、ねこちゃんにも個々の差がたくさんありますから。家のなかで動物たちができるだけ本能のままに過ごせるように、人間にあわせて習性を変えさせるのではなくて、リラックスできる住まいや間取りを考えていきたいですね。
さまざまな飼い主さんがいらっしゃるなかで、住まいづくりの際にどのようにご要望を取り入れているのですか?
沢辺さん:教科書的なことを押し付けないようにしています。例えば、普段、わんちゃんと一緒に寝ているという飼い主さんがいたとします。飼い主とわんちゃんは一緒に寝ないほうがよいという研究もありますが、それを押し付けるのではなく、一緒に寝ているのだから引き離す必要はないと考えます。ただ、お互いに体調が悪いときなどはあるでしょうから、同じ空間のなかに専用のベッドを用意してあげるなどのアドバイスをしますね。
このモデルハウスは戸建てですが、マンションや集合住宅のケースもありますか?
植山さん:賃貸住宅をはじめ、マンションもあります。大阪のある賃貸住宅では、わんちゃんやねこちゃんを2匹まで飼えたり、大型犬も飼えたりします。わんちゃんと楽しく暮らしている大家さんのご要望で、わんちゃんとの生活を楽しめる賃貸住宅を目指しました。
メイちゃんが仕事のヒントになったことはありますか?
植山さん:飼い始めてしばらくして、壁をかじったり、床に穴を開けたりしたことがありました。自分でさまざまな種類の床材を購入して敷いて実験したことがあります。強度や掃除のしやすさ、滑りづらさなどを検証して、良かった床材を敷いて使っています。そういった経験は仕事にも活きて、実際に色々な床材を敷き分けてわんちゃんに走ってもらう歩行実験も行なったことがあります。
ハチちゃんはどうですか?
沢辺さん:うちは飼い始めてからお留守番が多かったんです。しかし、コロナ禍になって、家族が家のなかにずっといる日が続くようになりました。すると、おしっこをしなくなってしまいました。人前でおしっこできない性格の子だったことに気づいたんです。おしっこがうまくできなくて体調を崩していた時期がありました。散歩の回数を増やしたり、一緒に部屋にいるときは、たまに席を外したりすることで改善しましたが、やはり適切なタイミングでできないこともあって粗相のお掃除が大変なこともありました。そこで、フローリングの上に掃除が楽なタイルカーペットを敷くことにしました。すると、足が滑りにくいので、タイルカーペットがある場所だけを歩くようになったんですね。その経験から、タイルカーペットは部屋のすべてに敷き詰めなくても、必要に応じて、一部だけに敷いてもよいと提案ができるようになりました。
今後のわんちゃんや、ねこちゃんとの暮らしで目標としていることはありますか?
沢辺さん:シニアになってわんちゃんや、ねこちゃんと一緒に暮らしたいと考える人には、若いときから一緒に過ごしていた人が多いのではないかと考えられます。子どものころから自分より弱い動物を大切に思い、かわいがりながら一緒に暮らすことはとても大切なことだと思います。そういった経験のうえに、シニアになったときにも、相棒として動物たちと一緒に暮らせるようになるとよいなと考えています。ともに暮らしやすい家かもしれませんし、サービスかもしれませんし、あるいは集合住宅のようなものかもしれません。シニアとわんちゃんや、ねこちゃんとの健やかな暮らしを提供できたらと思います。
植山さん:ペットを飼うときに、「動物を飼うのって大変だよね」と飼うのをあきらめるかたも少なくありません。一緒に暮らしやすい住宅で、そういったかたたちをサポートできたらよいなと考えています。動物と暮らすことに対するハードルがもっと下がって、一緒に暮らす人がもっと増えてほしいと思います。
一日のお気に入りの時間を教えてください
植山さん:家に帰った瞬間ですね。私が帰ってきた瞬間、メイがスキップして尻尾を振りながら駆け寄ってくれるとき、家に帰ってきてよかったと思います。
沢辺さん:うちでは、帰宅したときの鍵を開ける音を聞きつけると、キャイーンって鳴いて、そんなにかわいくない声なんですけど、お出迎えはわちゃわちゃしちゃいます(笑)。一緒にいる時間すべてが幸せでお気に入りの時間ですね。そういえば、最近、うちの子は絵をじっと見ていることが多いんです。廊下に床置きしている絵画をじっと見つめながら、なにか考えているみたいでおもしろいですよ。アートに目覚めたのかな(笑)。
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今回のロケ地「Tomorrow’s Life Museum 関西」
家族の明日の暮らしを楽しみながら学べる体験ミュージアムです。完全予約制で落ち着いて、ライフスタイルのコンセプトごとに洗練された素敵なモデルハウスを見学することができます。ご来場の際はウェブサイトから必ずご予約を。
https://www.sekisuihouse.co.jp/tlm/
〒619-0224 京都府木津川市兜台6-6-4
――モデルハウス「高橋さんち。」
――モデルハウス「山本さんち。」
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PROFILE
沢辺泰代さん、植山生仁さん
積水ハウス株式会社 住生活研究所所長
トイプードルのハチちゃんと暮らしている。「住めば住むほど幸せ住まい」をテーマに、収納、食空間、ペットなど幅広くライフスタイル研究に携わっている。
植山生仁さん
積水ハウス株式会社 住生活研究所
柴犬のメイちゃんと暮らしている。専門は感性工学。人もペットも楽しく健やかに、そして心地よく感じる空間を研究開発している。
積水ハウス 住生活研究所
Tomorrow's Life Museum 関西